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その46 欽ちゃん野球の |
タレント萩本欽一氏率いる「茨城ゴールデンゴールズ」が、人気低迷の野球界を賑わしている。 5月15日、群馬県太田市で行われた全国クラブ選手権北関東大会代表決定戦で、強豪の全伊勢崎硬建クラブを7−2で破り、9月の全国大会(西武ドーム)出場の切符をつかんだ。 チーム結成からわずか5カ月の快進撃だ。「全国大会に出れるなんて想像もしていなかった。いつの間に、こんな強くなったの? コーチ陣に感謝だね。そして選手のみんな、ありがとう!」。報道陣の質問に答えた欽ちゃんの目には涙がにじんでいた。 何が起こるか予測不能。これが「欽ちゃん野球」の醍醐味だ。観客をも惹きつけ、これまでにない野球観戦のスタイルを構築しつつある。 5月5日、市原市の市原臨海球場で「サウザンリーフ市原」との交流試合が行われた。午前11時の開場にもかかわらず、早朝から長蛇の列が出来た。1万人収容の球場に8200人が詰め掛けた。 この日は「こどもの日」。ネタは用意していた。試合開始2時間前、「これからパン食い競争やるよ!」の欽ちゃんの声に、先着30人の子どもがグラウンドに集まった。無邪気な笑顔ではしゃぐ子どもたち。スタンドも笑い声に包まれた。そして終盤、即席漫才まで始まった。 欽ちゃん「(パン)一つでいいのか?もっと欲しいか?」 子ども「欲しい!」 欽ちゃん「じゃあ持っていきなさい」。「お父さん、お母さんの分はいいのか?」 子ども「欲しい!」 欽ちゃん「じゃあ持っていきなさい」。「もっと欲しいか?」 子ども「欲しい!」。 欽ちゃん「じゃあ持っていきなさい」。「もういいか?」 子ども「欲しい!」 抱えきれなくなった子どもの腕からパンが落ちると「それは返してね」と、すかさず突っ込みを入れる。球場は爆笑の渦だ。 マイクを使っているため、やり取りはすべて聞き取れる。スタンドにいた50代の男性は「野球を見に来て、こんなに面白い経験初めてだよ!」と笑った。 パフォーマンスだけではなく野球も真剣だ。この日、臨時投手コーチとなった元巨人の江川卓氏擁するサウザンリーフ市原を4−3の逆転で破り勝利した。 試合後は変わらぬ光景がある。サインを欲しがるファンがいれば、一人残らず全員にする。 この日も、試合後4時間かけて球場の外に並んだファンの要望にこたえた。 選手は翌日の試合のため、山梨県甲府市に向かったが、最後まで笑顔を振りまいてペンを走らせた。終わったのは、午後8時半を回っていた。 毎回、球場を最後に出るのは選手でなく決まって監督の欽ちゃんだ。ファンのために、野球界の発展のために――。 欽ちゃん野球の真髄は、球場でしか味わえない。 |