「つまりね、電鉄会社という所はそういうモンなんだよ」と訳知り顔で教えてくれた知人がいる。
今回の合併問題、プロ野球界の話である。
「古くは阪急、西鉄、東急、身売りした球団の多くはみんな電鉄会社だ。国鉄もあったな。近鉄の合併だってその延長線。西武も阪神も怪しいもんだ」と舌鋒鋭い。
すべておっしゃる通りとは言わないが、確かにその傾向はある。
球団の変遷を見ると良い。日本のプロ野球、経営者は電鉄会社が多い。
その創生期、鉄道は基幹産業だったし、景気も良かったのだろう。
さらに会社としての戦略もあったはずだ。
プロ野球チームを持ち、自社の電車で球場に観客を運ぶ。沿線の開発にも良い影響を与えるはずだ。だから電鉄会社はこぞってプロ野球経営に乗り出した。
ところが、である。
「よく考えてごらん。電鉄会社はもうかりそうな所に線路を敷く。当たり前の話だ。ただし、もうからないと分かると彼らは廃線にする。簡単なんだよ、廃線なんて。営業路線を一本削ればよい、そんな感覚。だから気楽に身売りだの合併だのと言い出す。儲からなけりゃ、切り捨て。伝統ですよ」。
よってもって今回の合併問題は「廃線」思想のなせる技――なるほど新説である。
そんな話をしていたら7月7日、オーナー会議に西武堤オーナーが26年ぶりに登場して「合併進行中」と爆弾発言をしていった。あのグループ傘下にも電鉄がある。根っこは同じ、ということになる。
もっとも電鉄ばかりを責めてもいられまい。
「たかが選手」の暴言を吐いたのは私たちの同業者、新聞社のお偉いさんである。
本紙も含め、ほかの新聞に非難されたのにえらくご立腹で「もうしゃべらんからな」。それより「政局のほうが大事だ」そうだ。
その政局、小泉政権発足時に気味が悪いほどおだて上げたのが新聞(テレビも同様だが)である。政治も経済も社会もポリシーがない、という点では「廃線」思想同様でえばれたものではない。
「そう言うわけで、電鉄だけじゃないんだな。事の本質は」と締めくくろうとしたら「それならどうしたらいいんだ」としかられた。
だからというわけではないが、今回の問題について私の考え方を示しておきたい。
12球団存続は大前提である。経営がままならぬ球団は即刻退場。
新規参入に道を開くためにも参加条件を引き下げる(つまり協約改正。ライブドアではないが、新しい経営感覚が球界には必要。老舗の看板だけの、能力のない経営者たち=彼らこそ球界停滞の元凶である)。
高騰した選手年俸の制限(サラリーキャップ制)、贅沢税の導入。放映権など入場料以外の球団収入をコミッショナー一括管理、各球団への分配。最低でもこれだけの改革をしなければならない。そう考えている。
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