キャンプ入りを前日に控えた1月31日。プロ野球がスタートを切ろうという何もこんな時期に、というタイミングで近鉄が「球団名売ります」と記者会見を開いた。
ファンはこれから始まるであろう野球シーズンに夢をふくらませていただろうに、出バナをくじかれたようなものである。昔のひとはこういう間合いを「野暮」と言って蔑んだ。
巨人の渡辺オーナーは早速中日と阪神のオーナーに連絡、共同歩調で「断固反対」を打ち出した。ヤクルトの多菊社長は「事実上の身売りだろ」とこれまた批判的。西武堤オーナーは大物らしく? 一日遅れで反対の意向をしめした。
大リーグやJリーグのように地域をチーム名にすることに消極的で(横浜のようなチームもわずかにあるが)、地元への利益還元も時代の趨勢に押されて、やっと重い腰を上げた人達だ。
たいした企業努力もしないで巨人人気にぶら下がって商売できたのだから、野球サークルの和を乱す行為は、表向き野球協約違反の看板を掲げてはいるが、許せないという事だろう。
今回の近鉄の行為が企業努力と言えないことはない。野暮はともかく、「なかなかのアイデアじゃないか」と正直、見直した。赤字ならなんとかしよう、とするのは経営者としては当然の行為だ。
日頃お荷物球団と揶揄(やゆ)しておきながら、赤字解消へ新機軸を打ち出すと、よってたかって叩きつぶす。既得権ばかりに敏感な、この辺の体質は相変わらずで、これが球界の発展を阻害していることにお気づきでない。
近鉄よ。思い切って球団名だけでなく、球団の付属物でもなんでも売っ飛ばしてしまいなさい。
それによって、これまで球界に参入できなかった企業が少しずつ首をつっこんでくる。
既存の球団よりセンスの良い、球団を持ってもらいたい会社はいくらでもあるものだ。バラエティに富む。馴れ合いの世界に緊張感が生まれる。
乱暴な言い方だが、球界の改革はこんなところから案外芽吹くものである。必要なのは新陳代謝であり、新しい風だろう。今回の行動を間尺に合わないと一刀両断するのではなく、球界関係者はじっくり検討を加えて頂きたい。
さて、近鉄の球団名に名のりを挙げるのはどんな企業だろう。(その前に旧態依然とした実行委員会、オーナー会議が今回のアイデアをひねりつぶしているかもしれないが)。
消費者金融が毛嫌いされているようだが、それらの会社にも何千、何万のサラリーマンがいて、その家族には野球少年がいて、彼らがあなた方の経営、野球人気を支えていることを忘れないでほしい。
ファンはあなた方が思っているほど、経営者が誰であるかなど関心はない。必要なのは野球そのもの、だからだ。
「経済は一流、政治は三流」は言いふるされた言葉だが、「ファン一流、経営者三流」とは日本のプロ野球界のことである。
追伸 近鉄球団は2月5日、球団名命名権を撤回しました。
|